メンバーの声

メンバーの声

AI時代のキャリアカウンセラー

理事 萩原 一郎

平成30年6月29日、働き方改革関連法が成立した。

改正事項のうち、早いものは平成31年4月1日からの施行であり、これにより日本社会の労働慣行や働き方のスタイルが大きく変わることが期待されている。

今回の働き方改革がニュースになる少し前、AI社会における働き方という話題が世間を賑わせていた。この議論の発端は、オックスフォード大学のフレイ&オズボーンが、米国において10~20年以内に労働人口の47%が機械に代替されるリスクが70%以上になるという推計結果を発表したことである。

これを契機に、世界中で「雇用の未来」に関する研究ブームが起こり、わが国でもメディアや出版物による「現在の仕事の約半分がなくなる」といった記事が多く見られるようになった。自分自身、人工知能や自動運転などの記事に接するたびに、漠然とした不安をおぼえたものであった。

こうしたなかで先日、AIと雇用に関するセミナーに参加する機会があった。

そこでは、①これまで世界のなかでどのような論文等が発表され、どのようなコンセンサスが得られたか、②政府主導で取り組んできたドイツにおける雇用の未来について、が主要なテーマであった。

そのセミナーで、この議論の発端になったオックスフォード大学のフレイ&オズボーンによる論文は、将来的(50年後、100年後かは問わない)な機械への代替可能性を示しただけであり、今後新しい産業が興り、新しい職業が生まれ、新しい雇用が創出される分については考慮されていないという説明がなされ、メディアから流される情報がいかに表層的なものであるかを思い知らされた。また、自分自身、この表層的な論調を疑うことなく、信じ込んでしまったことにおおいに反省させられた。

言うまでもなく過去に学ぶことは重要である。世界史の授業で、19世紀初頭、産業革命発祥の地であるイギリスにおいて、労働者たちが仕事を奪われると考え織物機械を破壊するラッダイト運動がおこった。現実には、労働者たちが破壊した織物機械によって、肉体労働が機械に置き換えられ、また一方では様々な新しい職業が生み出され、人々はより豊かな生活が手に入れられるようになったという事実がある。

AI社会において、事務・管理スタッフや製造・運搬・物流関係の労働者は機械に代替されやすいと言われているが、創造性、社会的知能が必要な多方面の技能を有する職種は、AI時代においても機械では代替されにくいという。

例えば大学生に人気の就職先である公務員について考えれば、住民票や国民健康保険、国民年金などの定型的な事務作業は機械に代替される可能性が高い。一方で、生活保護者の就労支援や様々なサポート業務は優れて個人的な要素の強い仕事であり、機械では代替できないと考えられている。

そのような考えにホッとする一方で、人工知能が世界トップクラスの棋士を破ったというようなニュースを聞くに及んで、次のような心配も新たに湧いてきた。

 

相談者の心理的な動きやどのようなカウンセラーの言動にクライエントが安心を覚えるかなどを数多くの相談事例から学ばせる。これは、AIの得意分野である。そのうえで、個別の相談内容について、ベストとなる解決方法を応答する。

ほとんど人間と見分けがつかないアンドロイドのカウンセラーが、目の前の相談者に対し、AIにより導き出された応答をし、それに対して相談者が安堵の表情を浮かべているという光景は想像したくないが、もしかすると案外実現可能性が高いのではと思う今日この頃である。

 

雑感「働くこと 昔と今」 ~お互いさまで働く~

理事長 柴田 徇也

団塊世代の私は、今年70歳、古希と言われる年齢です。
中国の唐代の詩人 杜甫の詩にある「人生七十古来稀なり」に由来していると言われていますが、そんな年齢になりました。

普段の朝は、NHK朝ドラから始まります。最近の2作(「とと姉ちゃん」「べっぴんさん」)は、戦後の復興期の昭和時代の女性の活躍の話でした。「暮らしの手帖」、「ファミリア」の実話に基づく話だそうです。終戦直後の生活や生活環境が垣間見え、人々が明るく前向きに生きようとしている姿が描かれています。そこでは、毎日、生きる、生き続けることこそが働くことだったのでしょう。そんな事情を見ると「お互いさま」という言葉が浮かんできます。辞書を調べてみると「お互いさま」とは、相手も自分も同様の関係、環境、立場にあること。例としては「苦しいのはお互いさまだ~」ということです。

私ども団塊の世代が働き始めたのは、1970年(昭和45年)で、万国博覧会が大阪で開催された年でした。当時の仕事は、ほぼ全てが手作業で効率も良くありませんでした。ですので、お互いに助け合いながら仕事をしていた記憶があります。忙しいときは手伝ってもらい、自分が暇なときには手伝ってあげる。そこには「お互いさま」の気持ちがあったと思います。

また、当時は「サービス残業」も当然のようにありましたし、土曜日の出勤も、長時間労働も当たり前のようにありました。ただ、高度成長期に仕事をしていましたので、“今日より明日は良くなる”、“今年よりは来年は給料があがる”と仕事のモチベーションを保つことができた時代でした。

そしてバブル崩壊後の失われた20年、日本の働く環境が変わります。終身雇用や年功序列が否定され始め、“成果主義”の考えがでてきました。働く一人ひとりが企業にいかに貢献し、いかに成果を出すかが求められるようになりました。こうして、自分の成果を出すことだけに躍起になると周りが見えなくなります。そこでは「お互いさま」という助け合うことや協力しあうことは邪魔なものととらえられるようになりました。職場はギスギスし、成果を出せる人は過重な仕事に苦しみ、成果を出せない人はリストラへの恐怖に怯えるというように、会社の中がますますギスギスしていったように感じます。

これから日本は、総人口が減少する時代になります。当然ですが、働く人口も大きく減少することになり、女性や高齢者が労働力として働かなければならない時代になります。その時には「お互いさま」の考えで、助け合う職場、協力しあう職場になってほしいと感じています。